藤井市長無罪主張に水を差す中日新聞ネット記事

郷原信郎が斬る

9月17日、藤井浩人美濃加茂市長事件の第1回公判が名古屋地裁で開かれた。

検察官の主張に対する弁護人冒頭陳述は、既にブログ【藤井浩人美濃加茂市長事件 弁護人冒頭陳述】で公開している。

今回の事件については、警察、検察の捜査・処分や対応に重大な問題がある。

冒頭陳述でも述べているように、本件が「警察・検察に作り上げられた犯罪」であることは、今後の公判での弁護側の立証で明らかにしていくことになる。

それに加えて、もう一つの重大な問題は、ほとんど問題意識を持たず、警察、検察側から情報を鵜呑みにして垂れ流してきたマスコミの報道姿勢である。

藤井市長逮捕後、警察、検察側の情報或いは根拠のない憶測に基づくと思える夥しい「有罪視報道」が行われ、世の中に誤った認識を与え、公人たる藤井市長の名誉を著しく傷つけてきたことを踏まえ、事件報道、公判報道の在り方について、主任弁護人として、報道機関に度重なる要請を行ってきた。

今回の藤井市長の第一回公判についても、新聞、テレビの報道機関には、公正かつ中立的な報道を行うよう要請文を送付した「公正かつ中立的な報道を」美濃加茂市長・初公判をむかえ弁護人が要請(全文)】

こうした弁護人側からの要請を受けて、第一回公判を、マスコミ各社がどのように報道するのかに注目していた。

17日の夜から、第一回公判の模様は、テレビのニュースで報じられ、新聞のネット記事も次々とアップされた。その中に、目を疑うほど酷い記事があった。

この事件での警察、検察情報にもたれかかった「有罪視報道」の中心になってきた中日新聞の【判決は年明けも 美濃加茂汚職で初公判】と題するネット記事だ。

この記事には「岐阜」と表示されており、岐阜支局で書かれたと思われる署名記事だが、ネット記事として配信され全国で読まれている。

上記のように、主任弁護人の私からの要請文で、今回の藤井市長の第1回公判の報道に関して、検察主張及び「有罪視報道」への具体的反論となる弁護側冒頭陳述の具体的内容を、可能な限り詳細に報じることを強く求めているにもかかわらず、この記事は、弁護側の冒頭陳述について、

弁護側は「警察と司法に作り上げられた犯罪」とまで言い切った。

と紹介しただけで、その主張の内容は全く書いていない。

しかも、弁護側冒頭陳述で、「本件は警察・検察に作り上げられた犯罪である」と述べているのを、「警察と司法に作り上げられた犯罪」と誤って引用している。

「司法」というのは裁判所を意味する。検察は準司法作用を担うものではあるが、司法機関ではなく行政機関である。「司法」である裁判所は、警察、検察の捜査や起訴を容認することはあっても、自ら事件を作り上げることはあり得ない。

理由もなく「司法が作り上げた犯罪と言い切っている」と書かれた記事を読んだ読者は、「弁護人が荒唐無稽で的外れな主張をしている」としか思わないだろう。

この記事の問題は、それだけにとどまらない、全体として、藤井市長側がいくら無罪を主張しても、最終的には、有罪判決が確定することは避けられないかのように思わせる内容となっている。

まず、初公判の模様について、

争点となった現金の授受をめぐって検察側と弁護側は対立した。

とした後、いきなりQ&Aとなる。刑事裁判に詳しい記者が素人の質問に答えているかのような構成で、

判決で仮に無罪になっても、検察が控訴する可能性が高く、控訴審は名古屋高裁の裁判官が一審判決に誤りがないかを、判断の根拠となった全証拠を再検討する。有罪になれば市長は公民権停止で失職する

というようなことが書かれている。

そして、Q&Aに続く本文では、

初公判で、藤井市長が、「現金を受け取ったとされる事実は一切ありません」と言い切り、浄水プラントの導入が「美濃加茂市にとって有意義な事業」と力説した

などと藤井市長側の言い分について書いているが、その後、

だが、裁判は必ずしも市長側に有利に進んでいるわけではない。贈賄側の中林正善被告は、自身の裁判で金を渡したことを全面的に認めた。このまま、藤井市長の判決を待たずに有罪判決が確定しかねない流れだ。

としている。

要するに、「藤井市長は、現金の授受を全面的に否認して争っているが、被告人自身が裁判で言い分を述べる機会は当分ないし、贈賄を認めている中林の裁判が早期に確定するので、藤井市長の事件でも無罪判決は出にくくなる。仮に、中林供述の信用性が崩れて一審で無罪判決が出ても、検察が控訴する。」だから、「藤井市長が、現金授受を否認しても潔白を訴えても、どうせ、最終的には有罪となって失職するのだから、早く諦めた方がよい」というのが、藤井市長を支持する市民へのこの記者の「忠告」ということなのだろう。

しかし、9月8日に開かれた中林の公判で、次回期日は、約2か月先の11月7日と指定されている。

通常は、自白事件で勾留中の事件であれば、早期に結審して有罪判決が出るはずであり、我々藤井弁護団の側も、中林の自白事件の有罪判決が早期に確定し、藤井事件の公判に与える影響を懸念していたが、実際には、中林公判の結審・判決は大きくずれ込む見通しだ。11月7日の中林の次回公判までには、藤井公判のほうでも中林の証人尋問、他の関係者の証人尋問、被告人質問が終了し、結審が近づいている可能性が高い。

藤井市長の公判の見通しは、昨日の第1回公判後の記者会見で、弁護人からも大まかに説明し、それは、別の中日新聞のネット記事でも書かれているのに、この記事を書いた記者は、それを確認すらしなかったのか、中林公判で早期に有罪判決が確定するなどという見通しを根拠に「裁判は必ずしも市長側に有利に進んでいるわけではない。」などと述べているのである。

この記者は、岐阜支局で、5か月間も、藤井市長事件の取材をしてきたとも書き、

愛知県警担当記者から伝え聞く賄賂授受の情報。美濃加茂市の取材で得た「藤井君が現金を受け取るはずがない」という、市長の誠実さを信じる市民たちの声。「いったい真実はどちらなのか」。五カ月間、捜査当局と地元との温度差を肌で感じてきた私自身にとっても、この裁判には特別な意味がある。

と述べている。

しかし、「真実」に関心があるのであれば、なぜ、「地元の声」と「愛知県警側の情報」だけではなく、弁護人側の主張を知ろうとしないのだろうか。

この記事は、少なくとも、弁護人主張の「警察・検察が作り上げた犯罪」を「警察や司法が作り上げた犯罪」と誤って記載した点において明らかに誤報であり、主張の内容が引用されていないため、読者に重大な誤解を与えるものだ。

削除或いは訂正するのは当然だが、それで済むような単純な話では決してない。中日新聞の記事としてネットで公開されるにあたって、記事の作成及び掲載について社内でどのようなチェックが行われたのか、十分な検証が必要であろう。

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