法務大臣というのは、雑な頭のまま思いつきや勢いだけで務まる職ではない、ということを、誰かが新法務大臣に言ってあげたほうがよいのではないかと思います/落合洋司弁護士

日本の刑法は、法定刑の幅が広く、強姦致死傷罪も、既に上限が「無期懲役」にまでなっていて、悪質な犯行を厳罰にする上で支障がある状態ではないでしょう。実際、裁判員裁判では、強姦致死傷罪について、かなり厳しい判決が次々と出ていて、下限が懲役5年(これ自体、既にかなり重いものですが)で科刑に支障が出ているという状況にはないと言ってよいと思います。

強姦致死傷罪の下限を、強盗致死傷罪よりも重くして、7年以上の懲役にした場合、科刑にあたり酌量減軽を行った後の処断刑(科刑できる刑)の下限が懲役3年6月になって、その他の法律上の減軽事由(心神耗弱などですが、通常はないものです)がないと、執行猶予を付すことができないことになります(3年以下の刑でないと付けられないので)。強姦致傷罪のような罪では、強姦自体が未遂でそれほど重くない傷害(比較的軽微な打撲など)を負っているので強姦致傷罪が既遂というケースはよくあり、例えば、そういう状況で示談も成立し被害者も寛大処分を望んでいても、酌量減軽しかできないので実刑、という酷に過ぎることが起きてしまいかねません。かつて、強盗致死傷罪の法定刑が7年以上の懲役であった当時は、そういう酷なケースがよくあって、それで、他の犯罪が厳罰化する中で、強盗致死傷罪の法定刑の下限が6年に引き下げられた(酌量減軽すれば処断刑の下限が3年になって執行猶予が付けられるようになった)ことを思い出すべきでしょう。

法務大臣というのは、雑な頭のまま思いつきや勢いだけで務まる職ではない、ということを、誰かが新法務大臣に言ってあげたほうがよいのではないかと思います。