「懲戒の申立をしたって。一体何を考えているんだ。そんなもん受理されるはずもないが、直ぐに取り下げて来い」と怒鳴りつけた。/懲戒処分を受けた弁護士2000-10

※「自由と正義」51巻10号の公告による。

西田邦弘

富山弁護士会

戒告(平成12年7月12日処分発効)

【処分理由の要旨】

 西田は、国選弁護人に選任された窃盗被告事件の被害者である懲戒請求人と被害弁償の交渉をした際に、懲戒請求人から「本人も、親兄弟も、一度も謝罪にさえ来ないのに、弁償金だけ受け取る気はない。話があるならうちに来い。報酬を貰っているんだろう。俺も検察庁に呼び出されて出頭したんだから。弁護士がそんなに偉いもんなのか。被害弁償をすれば刑が軽くなるのか。あんな奴の刑を軽くする必要などあるものか。お前も弁護人の依頼があっても断ればよかったんじゃないか。」などと言われたことに立腹し、1999年9月22日ころ、「先日の君のあの無礼な電話の応対は何だね。こちらは自分から偉いなどと一言も言っていないのに、ああいう食ってかかり方は君の単なる僻み根性じゃないか。検察庁に呼び出されて出頭したというなら、私に呼び出されても同じように出頭しなければならないんだ(少なくとも検察官と同じくらいには偉いのだから)。『依頼があっても断れ』だの、君にそんなことを命令される謂れはない。『報酬を貰っているだろう』とは何だ。君に貰っているわけではない。検察官と同様国から支給を受けているのだ。『ウチに来い』など、たかが3000円の窃盗の被害者ごときが、そんなにエライものなのかね。国家の裁判制度まで否定するようなことを言うのなら、自分から刑務所に行って、怒りをぶつけるなり、説教を垂れるなりしてくればよいことだ」と記載した書面を作成し、発信人を表示しないまま、これを封筒に入れて懲戒請求人に雄壮し、更に10月2日、懲戒請求人に電話をかけ、「懲戒の申立をしたって。一体何を考えているんだ。そんなもん受理されるはずもないが、直ぐに取り下げて来い」と怒鳴りつけた。

【コメント】
 実は、西田の気持ちは私は分からないでもない。
 「たかが3000円の窃盗の被害者ごとき」ということでもないが、何を勘違いして自分の方が偉いと思っているのか、妙に不遜な態度をとる馬鹿が世の中にはいないでもないのである。弁護士だからといって侮辱されていいというわけでもあるまい。
 その意味では、私は西田に同情的ではあるが、侮辱されたその場で反論するならともかく、後日手紙に恨み辛みを書き綴るようでは余りに情けなく、戒告程度はやむを得まい。

引用:懲戒処分を受けた弁護士2000-10